【青井記念館美術館】第32回青井中美展

第32回青井中美展

2025年11月14日(金)― 11月30日(日)

第32回青井中美展の開催にあたって

富山県立高岡工芸高等学校 校長 角井 勇人

 このたび、第32回青井中美展(中学生美術展)を開催しましたところ、県内41の中学校から452点もの作品を応募いただきました。絵画・彫刻・工芸・デザインの分野から、若い感性あふれる作品253点が入選・入賞し、青井記念館美術館に展示いたしました。

 この青井中美展は、本校ゆかりの実業家、故 青井 忠治 氏寄贈による青井記念館美術館の改築・竣工を記念して始まったもので、今年で32回を数えます。中学生の創作活動の発表の場として、毎年多くの作品が出展されます。今年も中学生の皆さんからの作品一つ一つを、第一線でご活躍の作家・デザイナーの各先生方に鑑審査をいただきました。入選・入賞された皆様には心よりお祝いを申しあげますとともに、出品された中学生の皆様には、本美術展を契機としてより一層創作意欲を高め、作品制作の励みとしていただければ幸いです。

 本校は明治27年に若き美術家・工芸士を養成する「富山県工芸学校」として開校しました。日本有数の美術系学校として全国に知られており、卒業生には芸術院会員や重要無形文化財保持者(人間国宝)など、日本を代表する優れた芸術家を多く輩出しております。

 この歴史と伝統ある本校で、県内中学生各部門の力作を集め、一堂に展示できますことは意義深く、主催者として誠に喜ばしい限りです。

 結びに、審査員の先生方をはじめ、これまで生徒の指導に当たってこられました中学校の先生方、企画運営にご尽力いただきました関係各位に厚くお礼を申しあげます。

 


 

第32回青井中美展 青井大賞

 

 

「自分らしさ」

平中学校3年 木戸 朱那 

 


 

青 井 中 美 展 審 査 評

絵 画 部 門

  藤田 みゆき・大村 雅章・板倉 葵

  絵画部門の応募数242点のうち、105点を入選とした。全体的に表現の幅が広がっていると感じた。現実の世界を素直な視点で描いた作品に加え、自己の内面や空想の世界等、心動かされたものや表したいことが強く伝わる作品が多かった。今後も、みずみずしい感性や想像力を働かせ、心豊かに表現してほしい。

青井大賞「自分らしさ」 木戸 朱那

 中学生離れした描写力に圧倒される。人物の肌の質感や立体感、髪や制服の繊細な表現がすばらしい。構図も絶妙で、画面に広がりや奥行き、変化をもたらしている。鏡の中の自分を見ているのか。シュルレアリスムを感じさせる秀作である。

県教育委員会教育長賞「ししみゃい」 松澤 莉子 

 人間の祭りを猫の擬人化で表現していることが面白い。題材や軽やかな筆使い、艶やかな色彩等が日本の美を感じさせる。猫の配置、バラエティに富んだ表情やしぐさは、画面に動きをつくり出し、絵のどこを見ても楽しい。細部まで緻密に描き込んだ力作である。

優秀賞「希望とは」 高桑 莉奈

 朱と藍の色彩のコントラストが美しい。瓶とグラスを大きく対に配した大胆な構図と共に、力強く訴えてくる。中に閉じ込められたようなクジラと金魚は、外の世界に憧れているのか。夢想的な雲も何かを案じするよう。イマジネーションを刺激する作品である。

富山新聞優良賞「光の奥へ」 髙木 琉那

 生い茂った緑の丁寧な描写が目を引く。輝きを放つ鍵穴のような隙間から、奥を覗き込む構図も印象的である。視線を合わせる鹿は、トンネルを抜けた明るい世界への案内役か。暗い色を巧みに使い、濃厚な画面をつくり上げた、不思議な魅力をもつ作品である。

 


 

彫 刻 ・ 工 芸 部 門

 十六代 小原 治五右衛門 ・ 鈴木甲一郎

 本年の彫刻・工芸部門の応募点数は101点で、80点の入選となった。素材も発想も実に多彩な作品が寄せられた。革、木、紙、粘土、スタイロフォーム、さらには廃工業製品など、素材の持つ質感や特性を的確に捉え、独自の表現へと昇華させた意欲的な試みが目立った。それぞれのコンセプトに応じて素材を効果的に扱う作品も多く、今後、基礎的な技術の習得を重ねることで、より深みのある造形世界へと発展していくであろう可能性を感じた。

富山県知事賞「再生」 高瀬 凛音

 牛をモチーフに、多種多様な革を貼り合わせて構成した造形作品である。シボ、スムース、スエード、ヌバック、ハラコなど、質感や色調の異なる革が巧みに組み合わされ、縫い合わせのラインや重ねのリズムが生命の鼓動を想起させる。ハート型の革が象徴的に配され、命へのまなざしと再生への祈りが込められている。素材の扱いにも柔軟な感性が光り、今後、革細工の技術を磨くことで、新たな表現領域の開拓が期待される秀作である。

最優秀賞「機械ゴミのスニーカー」 祖谷 奏輔

 鮮やかなネオンカラーのスニーカーが歩みを進める立体作品。その足跡は、ボルトやナットといった機械廃材によって象徴的に作られている。軽快な造形のユーモアの裏に,現代文明が生み出す廃棄物と人類の未来への問いが潜む。「歩く」という行為を通じて、人間の創造と破壊、希望と矛盾を一体化させたコンセプチュアルな作品であり、素材選択の妙と現代社会への批評性が見事に調和している。

優良賞「壮麗な貴人」 辻 千鶴

 13頭身という誇張されたプロポーションが、気高さと幻想性を湛える。髪やドレスに用いられた素材の選択も巧みで、貴人の静謐な表情や、ミズメザクラの重厚な台座に横たわる薔薇の花が、荘厳さと繊細さを見事に両立させている。単なる美の追求にとどまらず、作者の内なる理想像が強く投影され、見る者に静かな感動を呼び起こす。素材、構成、造形、すべてにおいて完成度の高い快作である。


 

デ ザ イ ン 部 門

  筏井 秀樹 ・ 城石 和良

  デザイン部門には、109点の応募があり、68点の作品を入選とした。自由な発想で描くイラストレーションが多かったが、遠近法を使った構図やグラデ-ションなどで色彩を工夫した力作が多く、入選作品を含む各賞に選ばれた作品は、表現したいものが伝わる優れたデザインで、それぞれの作者の感性に心を動かされた。

富山新聞優秀賞「夢はその先」 米澤 史華

 きれいな海にクラゲがゆらゆらと漂うイラストレーション作品。クラゲの特長である「浮遊生活」を「夢」に表現しているのだろうか。広がりのある空間を表現した神秘的な海のグラデーションと透明感にこだわったクラゲの描写がとても上手で、多くの中で真っ先に目を引いた作品だった。

優良賞「夢」 中野 明日実 

 カラフルなゼブラをモチーフにした作品で、親が子に話しかけているのか、子が親に夢を語っているのか想像は尽きないが、鮮やかな色彩が多感で可能性に満ちた「作者の夢」を表していて、見る側も夢を共有できる気持ちの良い作品だと思う。

富山新聞優良賞「新しい都市」 高城 秋斗

 色鉛筆を使って近未来の都市を描いた作品で、その建物の精緻な描写に感動した。よく見ると所々に文字が書いてあり、作者の目標や信念、あるいは好きな言葉なのか?興味津々である。自然に囲まれた環境のもと、多くの人々が暮らす豊かな街を創造してくれてありがとう!

 


 

第32回青井中美展 入賞作品​

富山県知事賞

「再生」

大谷中学校1年 高瀬 凛音 

富山県教育委員会教育長賞

「ししみゃい」

五位中学校3年 松澤 莉子

 

 

 

 

   

最優秀賞

「機械ゴミのスニーカー」

津沢中学校3年 祖谷 奏輔

優秀賞

「希望とは」

出町中学校2年 高桑 莉奈

 

 

 

 

   

富山新聞社優秀賞

「夢はその先」

牧野中学校2年 米澤 史華

 

 

 

 

 

 

 


 

 

審査会

10月31日(木) 尚美会館

 

 

表彰式

11月14日(金) 尚美会館 15:00~

 

 

講評会

11月14日(金) 青井記念館美術館 15:55~